立地について
敷地の南側には2階建ての戸建てエリアが奥行き約1km向こうまで広がっています。高さ10mを越す建物が建てられる第一種中高層地域と10m以下の建物しか建てられない第一種低層住居専用地域の境界線がマンションの敷地内南側にあり、南側を向いた3階以上の階は、特に見晴らし・風通しは良好です。元々ゴルフ練習場としてひとつの土地だったところを、戸建エリアとマンションの敷地に分けたという経緯があり、マンションと同時期に建てられた南側に広がる戸建住宅エリアは、真新しくて美観もきれいです。
建物の安心・快適性について
「住宅性能評価」を取得しています。「耐震等級2」とは、建築基準法の1.25倍の耐震性が確保されていて「数百年に1度程度発生する地震の力の1.25倍の力に対して構造躯体が倒壊、崩壊等しない程度」で、「数十年に一度程度発生する地震の力の1.25倍の力に対して構造躯体の損傷を生じない程度」ということになります。もっと分かりやすく東京を想定した場合の例をあげると、「数百年に1度程度発生する地震」は「震度6強~7」、「数十年に一度程度発生する地震」は「震度5強」程度です。一般的に指定避難場所として使われる学校等が「耐震等級2」の耐震性で造られていますので、それと同等の耐震性を持つマンションに住むということは、かなりの安心感があります。それに加え住宅性能評価の「劣化対策等級」では最高等級の「3」を取得しています。「耐震等級2」のマンションでも、コンクリートの経年劣化は起きてきます。「劣化対策等級3」とは、簡単に言えば構造躯体のコンクリートの寿命を長くするため(概ね75~90年まで大規模な改修工事を必要としないように)の対策が講じられているということで、このような対策は、マンションの長期修繕計画上の費用を抑えることにも結びついてきます。
建物構造が安心であること加えて、快適性が伴ってこないと良いマンションとはいえません。このマンションは住宅性能評価「高齢者対策等級(共用部分)」の「4」を取得しています。「高齢者対策等級4」とは、自走式車椅子と介助者が、住戸の玄関からマンションの入り口まで容易に移動できるように、廊下の幅やスロープの勾配などに配慮がなされているという評価です。名前は「高齢者対策等級」といいますが、結局は誰にでも使いやすいユニバーサルな空間ということです。
半分柱を出して柱と柱の間に花台を渡した広い共用廊下は、行きかう人々の心にも「ゆとり」を与え、花台にプランターの花が咲いていれば生活はもっと楽しいものになります。広い廊下は車椅子利用者にとってもやさしい通路になり、廊下のコーナー部分にある車椅子の回転スペースが、移動の不便さをとても楽にしています。
居室の中には、廊下の床から130cmの高さまで壁の中に横手すり用の下地が入れてありますし、玄関の上がり框にかかる壁の中には竪(たて)手すり用に高い位置まで下地が入れてあります。玄関と廊下の手すりはライフスタイルや住まわれる人の世代によって全く不必要であることも考えられますが、いざ取り付けようと思ったときには意外とたいへんです。体重をかける手すりはしっかりと固定する必要があります。下地の板を後で取り付けると目立って玄関廊下の美観を損ないかねませんし、壁に下地を埋めるためには、廊下全部の壁紙を剥がして貼りなおすことになって費用が嵩みます(部分的に張り替えると上下と色違って美観を損ねるため)。始めから下地が付いていることは、たぶん購入当初はありがたさが分かり難いかもしれませんが、実はとても役にたつ配慮だと思います。廊下に横手すりなんて必要ないと思っている方でも、玄関で靴を履くときに「竪手すりがあるといいな」と思ったことはないでしょうか?
このマンションの各住戸のトイレには手すりが初めからつけられています。ご高齢者にとっても、小さいお子様にとっても手すりがあるととても安心です。ハウスメーカーの戸建住宅では、今や当然のように設置されているトイレの手すりですが、まだまだマンションに初めから設置してあるケースは少ないように思います。トイレの手すりは特に取り付け位置が大切です。「廊下につける手すり」や「体のバランスを保つための玄関の手すり」とは違い、「座った状態から立ち上がろうとするため」の手すりで、体重をかけるために「握った手」にしっかりと力が入る位置にないと役目を果たせないからです。さらに言うなら体や腕の長さ、あるいは利き腕側に合わせた手すりでないと使いづらいものになってしまう恐れがあります。脳梗塞などで片側麻痺が生じた場合には、全体重を健常の腕にかけて立ち上がるため、手すり位置を実際に使う人の腕の長さにあわせて慎重に設置しますが、加齢などにより必要になる補助的な手すりは、ユニバーサル的な配慮がある建物には予め設置しておきます。その場合の平均的な「トイレと竪手すりの位置関係」は座って下げた腕を90度に曲げ、少し前に出した状態で竪手すりを握り、引き寄せるようにして楽に立ち上がれる位置とは、一般的に便座の先端から15cm~30cm程度の位置といわれています。今回のこのマンションでは、使いやすい位置についている部屋のタイプと、使いにくそうな位置についている部屋のタイプが見受けられました。ただ、手すりの位置などは、建物の構造や耐震性に比べると将来いくらでも変更が出来るので、そう問題にはならないと思います。


一級建築士:須藤 明子
主婦・子育ての経験とマンション・戸建の設計実務の経験を生かし、生活面建築面の2方向から鋭くマンションをチェックする一級建築士

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