住戸と配置について
このマンションは敷地の北側と東側に幅員約11mと、ほぼ同幅の道路に接している角地で、住棟は敷地の西側に南北軸で直線配置(A~G、J~Lタイプ)されています。その棟に直交するかたちでワンフロア2住戸構成(H、I、Mタイプ)の住棟が敷地東側の斜めになっている道路境界線に沿って、角度を少し傾けて配置されています。
メインの住棟とワンフロア2住戸構成の住棟とは、外廊下でブリッジ状に結ばれています。単にL字状に連結されているプランよりもお互いの棟間があいているので、風がここちよく通過するでしょうし、住棟配置に変化がつけられた結果、暮らしのなかで、ちょっとした目線の変化にもつながるでしょう。
メインエントランスは敷地北側、西寄りの前面道路から出入りできるようになっていて、
駐車場出入り口が敷地北東側の交差点角、隅切り(境界)から都安全条例上を満足した場所(隅切りから5m以上)に設けられています。車の出入り口が交差点に近く、出入庫の際には注意が必要です。それは歩車道分離をするためにぎりぎりの位置になったものと思われます。歩車道分離とは、敷地内での人と車の接触を防止するための設計で、特に小さなお子様がいらっしゃる家庭では安心感があります。
各施設の配置は計画上タイトな感じは否めないのですが、住棟に近い機械式駐車場は3段となっていて東側の4段式よりも1段少なく、移動パレットの騒音軽減と居住者に威圧感を与えない配慮が感じられます。
プランについては、総戸数86戸(管理事務室1戸を含む)の内訳として、約64㎡台クラスから70㎡台クラス、そして最大80㎡クラスとバリエーション豊かなタイプが用意されています。1階から10階までの住戸タイプ(A、B、G、J、K、L、I)は玄関ポーチ付となっています。またバルコニーに面するリビング・ダイニング、和室側はアウトフレームの採用で室内には柱型が突出することなくすっきりしています。バルコニーの奥行きも2mは確保されています。
駐車と駐輪場については100%の駐車率は市街地のマンションでは必須に近い条件ですが、敷地条件からなかなか確保できないのが現状でしょう。このマンションでは、来客用平置(洗車場兼用)と車椅子使用者専用平置駐車場を別に備えていて、駐車場率は100%を超えます。また、駐輪場(サイクルポート)も駐車場の出入り口と交差しない位置で、エントランス横と敷地の東端に的確に配置されています。
駐輪スペースも85区画設けられています。従って一住戸当たり2~3台の駐輪が可能です。この収容台数を確保するために、直線住棟の1階部分の南端と、ワンフロア2住戸の東端が駐輪場として使用されています。そのため、1階の各住棟の駐輪場に隣接する住戸(F1、H1タイプ)は自転車の出し入れに伴う音が多少気になることがあるかも知れません。
バイク置場は計20台が確保できていて、内訳としてミニバイク用に10台、中・大型バイク用に10台が用意されていて、車種の違いによる駐輪の混乱を整理する意味でも配慮が感じられます。
基礎構造では深さ2~2.5mの基礎梁の下部に現場打ち鋼管コンクリート杭+拡底杭が採用されています。壁はダブル配筋、柱はスパイラル筋と溶接閉鎖型筋を適所に使用して粘り強さを与える構造で耐震性を高めています。
住戸内について
フラットにこだわった住戸内は、床段差を3mm以下に抑えられていてつまづきがありません。床は遮音性能LL-45のクッション層を含む直貼床、天井部はリビングでスラブ下約135mmの空間を保ち天井高2,550mmを確保。細かいところではスイッチ類はタッチ面が広く押しやすいワイドプレートスイッチ、床上50cmに設置されていて、ひざを曲げないで使用できるハイマウントコンセントとなっています。住戸タイプ(C、D、Eを除く)の洋室に付属するグランドクローゼット(約1.6~2.4畳の広さ)は、部屋の広さをより感じさすと共に、クローゼット内の照明を消すと存在が気になりません。また各戸共通していますが、和室スペースが4枚引込み戸襖仕様となっていて、引き込み収納部分の収まりが部屋内に出っ張らないように上手に処理されています。そのためフルオープンの時はリビング・ダイニングと空間がつながり、大人数のパーティとか、不意の泊まり客の対応等にフレキシブルに応えることができます。
まとめ
マンションの周辺には区の公園が数多く整備されています。また川を埋め立てて公園化された緑地帯も数カ所あります。それらに加えて、近く(徒歩約6分)には東京都水道局森ヶ崎水再生センターの上部に造られた緑と運動施設を持った公園、そして都立の海上公園も点在していて、水辺の区としてとても恵まれた環境にあります。武蔵野台地のすそ野にも位置しますので古来からの湧水も見受けられます。
大田区の南北をJRと京浜急行本線が並行して走り、JRでは大森と蒲田駅、また京浜急行の諸駅のなかでは京浜蒲田駅が地域核となっています。それを繋ぐ横の動線(東西)がバスであり自転車となります。そして、その東西の動線に沿うようなかたちで賑わいある商店街が形成されています。この東西の動線エリアの中に、このマンションは立地しています。この「大森南周辺地区」は、「住工の調和したまち」を目指したまちづくりが進められていて下町の雰囲気が色濃く残る界隈です。
徒歩10分圏内にスーパー、金融機関、医院等の日常生活必需の業種がほとんど揃っていて、また嬉しいことに地域医療を支える総合病院、救急医療病院も周囲に点在しています。最寄りの駅までのアクセスには多少時間はかかるものの、一旦主要駅にたどり着けば都心へのアプローチには最適であり、基本装備充実の、ついの棲家となるマンションでしょう。

一級建築士:久我 高廣
組織設計事務所勤務後、設計事務所を20年間経営。プロダクトからインテリア、住宅設計、また商業施設、都市再開発等のプロジェクトの調査、企画、設計のコンサルティングを手がける一級建築士


